あの子のとなりを記録したい

 ゆらゆら揺れている後頭部を、じっと見つめる。窓から差す午後の陽射しは、少し色素の薄い髪を綺麗に照らして美味しそうな紅茶色にしていた。  ゆっくりと古文を読みあげるおじいちゃん先生の落ち着いた声。暑くもなく寒くもない室温。昼休みの換気を忘れていたのも相俟って、眠気が教室を完全に支配していた。  かくいう私も、紅茶色のクセ毛が目立つ尻尾を眺めている不真面目な生徒なのだけど。光源氏がどうの、とか。多分テスト前に焦ればいいだけの話だ。  そんなことよりかは目の前の髪のほうが余程私にとっては重要だった。触ったら柔らかいんだろうな、とか。三つ編みさせてくれないかな、とか。私は黒髪だしクセもあんまり出ないし、ショートカットにしているからほんの少し、彼女が羨ましい。  あーあ、どうして今日は火曜日なんだろ。水曜日だったら、一緒にプリクラとか行けたのに。

2026/04/04